- 布に寄り添い生かす。 -

NORAのものづくりの根本にあるのは、「布に寄り添い⽣かす。」という考えです。

そして、私が向き合っているのは、⽇本で古い時代につくられた布そのもの。

⼀枚⼀枚の古布には、それぞれ異なる表情があり、同じ素材、同じ時代であっても、残されてきた環境や使われ⽅によって、その状態は異なります。

⼀着分しか残っていない布がほとんどで、⼀度裁断すれば、同じ条件でもう⼀度つくることはできない。

だからこそ、⽬の前にある布を⾒ながら、どのように作品を仕⽴てるのかを考えています。

布の状態や表情によって、つくり⽅も変わる。

⼀着つくるたびに、その布から得られる経験が積み重なり、新しい疑問や発⾒が⽣まれます。

ある⽇、初めて⽇本の古布を⼿に取り、その布が持つ⼒に感動しました。

その出会いが、現在のNORAのものづくりの始まりとなりました。

やがて、その関⼼は布そのものだけでなく、布が残されてきた場所や、かつての⼈たちのものづくりへも向かうようになりました。

 

「この布はどこから来たのか」

「どのような場所に残されていたのか」

 

そうしたことを知りたくて、⾃ら古い家や蔵へ⾜を運び、布が残されている現場を⾃分の⽬で確かめるようになりました。

そこで出会った⼈たちから、昔の暮らしや当時のものづくりについて話を聞くこともあります。

その中で感じるのは、現代とは異なる「ものを⾒る感覚」です。

技術的な優劣や歴史的な価値といった理屈ではなく、「これ、いいでしょう」と、⽬の前にあるものの良さを素直に感じること。

情報や選択肢が今ほど多くなかった時代には、ものをつくることも、もっとシンプルだったのではないかと考えるようになりました。

もちろん、当時の⼈たちが何を考え、どのような感覚でものづくりをしていたのか、そのすべてを知ることはできません。

それでも、限られた材料や環境の中で、その時にあるものを使って何かをつくる。

そうした、かつての⼈たちのものづくりの感覚に、少しでも近づいてみたいという好奇⼼があります。

しかし、NORAが⽬指しているのは、昔の服やものづくりをそのまま再現することではありません。

古い服の構造やつくり⽅を知り、布が残されていた場所を訪ね、当時の暮らしに思いを巡らせる。

そうした経験を重ねながらも、最終的につくるのは、現在を⽣きている⾃分たちの服です。

これまで⾒て感じてきたもの、積み重ねてきた経験を持ったうえで、どこまで余計なものを削ぎ落とし、⽬の前の布と向き合えるのか。そこに明確な正解があるとは考えていません。

⼀着つくれば、また新しい疑問が⽣まれる。

違う布を使えば、それまでとは違う発⾒がある。

当時作られた服を⾒返せば、そこに新たな気付きがある。

そうした経験を重ねながら、ものを⾒る感覚や、布との向き合い⽅も少しずつ変化していきます。

「布に寄り添い⽣かす。」

この根本にある考え⽅を⼤切にしながら、その時々で⾒えてくるものを受け⼊れ、⾃問⾃答を重ねていく。

NORAはこれからも、その時の⾃分だからできるものづくりを続けていきます。